「ライブコマース」という言葉、一度は耳にした事があるのではないでしょうか?
ライブコマースとは、一言で説明すると、SNSなどのライブ配信ツールを用いて商品販売を行うオンライン商品販売形式です。
そんなライブコマースが、隣国中国で何やらすごい盛り上がりを見せているらしい…。
例えば、トップインフルエンサーのライブ販売の一日の売上高が12兆円を超えた、ロケット販売がライブコマースで配信されたケースもあるようで、まさに宙に浮いたようなとても信じがたい話です。
しかし、もしそれが事実であるとすれば、日本も例外なく真似できる要素があるのではないでしょうか。
「同じアジアの大国として中国と親しい文化を一部共有する日本においても、ライブコマースにおける成功例の重要な部分を把握できれば、日本でもきっと簡単に、というと語弊がありますが、より効率的にラブコマース成功し、また重要なビジネスの手法として浸透しするのではないだろうか?」と思い、隣国中国のライブコマースにおけるものすごい(!)ビジネスモデルを徹底的に調べてみました。
ライブコマースとは?
日本でもライブコマースは少しずつ注目を集め話題になってきており、仕組み自体はふよくご存知だという方も少なくないでしょう。
簡単に説明すると、ライブコマースとは「SNSなどのライブ配信ツールを商品販売を行う新しいオンライン商品販売の形式」です。リアルタイムで情報を共有できる動画配信を用いて商品やサービスを紹介しながら、コメント機能を活用して視聴ユーザーからの気になる点や質問などに答えていくなど、リアルタイム配信ならではの共時的でインタラクティブな接客とコミュニケーションを提供することができます。

出所:36KR RESEARCH
コロナ禍において店舗へ足を運び買い物をするユーザーの激減への対策として販売者のメリットはもちろん、視聴ユーザー(潜在カスタマー)にとっても、従来のオンラインショッピングのデメリットであった、画像やテキストといった一面的なコンテンツだけでは伝わりにくい商品の使用感や販売者(プロ)からの実際の意見などを、わかりやすく詳細にリアルタイムで説明を受けられるというメリットがあります。
中国における主要な3タイプのECプラットフォーム
中国よく見られるライブコマースのプラットフォームは大きくわけて3種類あります。
➀伝統的なECプラットフォーム(TAOBAO &JINGDONGなど)
➁SNSプラットフォーム(TIKTOKなど)
➂ソーシャルEC(MOGUなど)
3種類のプラットフォームに大きな違いはなく、
➀伝統的なECプラットフォームは、より多くの選択肢を提示した商品数勝負で販売色が強い傾向にあり、
そこにエンターテイメント性を強めてユーザーの流入数を増やすことに注力しているのが➁SNSプラットフォームや➂ソーシャルECです。既にインプレッションがあるところに、利益目的の物販を始めるといった使い方です。
出所:36KR RESEARCH
ライブコマースには、販売事業者/メーカーの従業員、KOL(Key Opinion Leader=インフルエンサー)という2タイプの主流な配信者がいます。
後者に関しては、KOLの育成やマネジメント等を行う仲介事業者MCN会社(Multi Channel Network)が存在し、MCN会社を通じて企業が案件をKOLに依頼する形態も多く存在します。
例えば、ライブコマース最大手の淘宝直播(タオバオライブ)では、配信者の9割が販売事業者/メーカーの従業員等、中国版TikTok・DOUYINではその割合は逆転し、ほとんどの配信はKOLによってなされています。※「2020年商家直播白皮书」 参照
配信者であるKOLやMCNには、依頼者(販売事業者/メーカー)から、販売額に応じて報酬が支払われる形態が一般的です。そして、ライブ配信プラットフォームには、販売事業者やMCN等から手数料が支払われます。例えばプラットフォームDOUYINには、KOLに支払う料金の30%が手数料として徴収されます。

出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
中国のライブコマースでは、文字の如く何でも販売されている
日本でもライブ配信を通じた販売方法は増加傾向にあり、その商材の分野はファッション化粧品、及び日用品・雑貨類なのが一般的です。しかし中国では、こういった商品以外に、私たちの想像の範囲を超えてくるさまざまなカテゴリーの商品が多数販売されています。
もちろん前述のカテゴリーの販売は多いのですが、家具、デジタル製品、家電、書籍、車に至るまで、ライブコマースに対応しない製品が無いのではないかと思うほど、幅広い分野の商品がこの手法によって宣伝されているのです。

出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

冒頭で少しお話しましたロケットに匹敵するほど私が驚いたものが、DOUYINでYOUKUの有料会員チケットが販売されていたことです。閲覧ユーザー数がわずか26人であったにも関わらず、配信者はめげずに3時間にものぼるライブ配信を行いました。それも、一回ではなく平日14時頃にDOUYINを開いてライブ配信を確認する度に、彼は常にYOUKUのチケットを販売するためのライブ配信を行っていました。毎回の視聴者は、伸びも減りもせず相変わらず20人程度。


优酷公式抖音キャプチャ
販売数が公開されていないため販売実数は把握できませんが、この閲覧数で一体何枚販売できたのかはかなり気になるところです。3時間の人件費と販売利益を並べて見ると、なんだかROIに合わない気がしますが実際にはかなりエンゲージメントが高かったのかもしれません。人件費が安いといわれる中国だからこそ、なし得た事例かもしれません。
中国のライブコマースの市場規模を数字で徹底解説
市場規模
2016年にECプラットフォームにおけるライブショッピング機能がリリースされて以来、中国でのライブコマース市場は急速に拡大しています。
2016年から2019年にかけて、ライブコマースの年平均市場成長率は200%以上を維持し、 2020年には中国のライブ販売の市場規模は9610億元(約16兆2950億円)に達し、前年比で121.5%と大幅に増加していま。2021年には1兆2000億元(約20兆3470億円)に上ると推計されており、まだまだ伸びしろのある市場であることが予想されます。
また、CNNIC(China Internet Network Information Center)によると、2020年12月時点で中国でのインターネットの普及率は人口の70.4%にあたる9億8900万人、そのうちネット通販を利用するユーザー数は7.5億人、ライブコマースを利用するユーザー数は3.1億人にのぼるようです。中国でのインターネットの普及率のさらなる上昇、またライブコマースユーザーはまだまだその3割にも満たない現状を加味すると、ライブコマースの市場成長の拡大はさらに期待できるものです。
参照:https://www.cnnic.com.cn/IDR/ReportDownloads/202104/P020210420557302172744.pdf

参照:
その伸び幅は、実際にECプラットフォームにおけるライブショッピング機能がリリースされた2016年から2019年間にライブコマースの年平均市場成長率は200%以上を維持していることからも読み取れます。
iresarchが公開したデータ統計によると、2020年には中国におけるライブ販売の市場規模は9610億元(約16兆2950億円)に達し、前年比で121.5%と大幅に増加。2021年には1兆2000億元(約20兆3470億円)に上ると推計されています。

出所:IIMEDIA
中国におけるライブコマースの規模感がわかる“すごい”話
その①:年間でもっとも大規模なネットショッピングデー「独身の日」の売上は、12兆円超え
ご存知な方も多いかもしれませんが、中国では11月11日の「独身の日」が、一年間のうちもっとも大規模なネットショッピング・デーとされています。
2020年の「独身の日セール」では、アリババの売上は自社過去最高の4982億元(7兆9200億円)を突破し、アリババに次ぐ大手ECサイトのJDドットコム(JD.com)も独身の日プレセールを行った11日間で、2715億元(4兆3000億円)を売り上げており、業界上位2社だけでその売上12兆円超えを叩き出したのです。
参考:https://www.alibabagroup.com/cn/news/article?news=p201112
その②:約7億円相当のロケットがライブ配信開始から2時間以内に売り切れ
中国でトップライブコマースKOLの薇娅(Viya)は、
2020年に、商業宇宙開発企業と連携しライブ配信で史上初の小型ロケットを販売しました。商品価格は4500万元(約7億円)ですが、ライブコマース優待価格で4千万元(約6億円)に割引きし、最初に50万元(約770万円)の手付金を支払う事で購入できる流れです。ライブ配信開始から2時間後、淘宝直播は微博の公式アカウントを通じて「ロケットは売り切れた」と発表しました。その後の話によると、約800人のユーザーがロケットの前金を支払っていたことがわかりました。Viyaは2021年1〜2月のライブコマース配信で5063.5万元(9.77億円)も売上ています。
参考:https://www.163.com/lady/article/F96VSN1P00267VQQ.html
なぜ中国でライブコマースは成功したのか?
ライブコマースが中国で軌道に乗っている理由は沢山あります。
・「みんなが持っている」モノに敏感
・信頼する人からの「口コミ」をかなり重視する国民性
・数多くの個人事業主と安い人件費
・発達している配達業が中国のライブコマースの繁盛を支えている点
・SNSの普及による消費者のライブ視聴習慣が形成されている
・様々な強力な電子商取引プラットフォーム
・マーチャントによる収益チャネルの開拓
・KOL(インフルエンサー)文化
・各種政策の支援
など、さまざまな要因が絡み合って、ライブコマース市場は中国で活性化しているのではないかと考えられます。
上記を踏まえて特筆すべき、中国においてライブコマース事業を成熟させた理由を解説します。
➀トレンドに敏感な国民性
➁ライブコマースサービス開始から約5年間で形成された充実のプラットフォーム
➂政府による手厚い支援
④人口の多さ=人件費の安さ、発達する配送業
⑤数多く存在する製造工場
➀トレンドに敏感な国民性
日本人の中国人に対する印象として「爆買い」が一つ挙げられるでしょう。爆買いもまた、彼らの国民性によって起きたことです。一人っ子政策が始まった80年代生まれの中国人は、兄妹がいない分、友達を物差しとして行動する傾向にあります。そのため、周りで話題になっている流行やトレンドモノに敏感で、海外ブランドやハイクオリティーな物を好みます。さらにその一回り下の世代である、インターネット普及により豊富な情報に触れて育った90年代生まれの世代は、「個人主義」「自己中」「新人類」という比喩がされ、理解し難い新しい価値観を持った層として注目を集めました。しかし、どの年に生まれたとしても変わらないのが、中国人はコミュニケーションが大好きで、雑談することがとても多く、とにかく自分が知っていることを周りに紹介したがる性格です。それが理由で、「口コミ」文化は中国でとりわけ相性の良い手法となったのかもしれません。
中国ではとにかく情報の拡散がとても早く、「取り残されたくない」、「周りがやっていることをまずやってみたい」、そしてとても負けず嫌いで、「他人がやったことを知ったうえで、やってないことをやりたい」「舐められたくない」といった見栄からモノを買ったり、行動したりするのです。
そのため、中国では個人の深い趣味嗜好に基づいた商品というよりも、とにかく”流行”するものが売れる傾向にあり、トレンドは出てはすぐに消えてゆく隆起の多いものなのです。
➁ライブコマースサービス開始から約5年間で形成された充実のプラットフォーム
ライブコマースは中国でいきなり市民権を獲得した訳ではなく、成熟するまで5年もの年月を費やしました。2016年、4Gやモバイル端末の普及に伴い、ライブ配信はエンターテインメントやマーケティングなど多様なシーンへ応用されていきました。
Eコマースプラットフォームは、販売の新しい道を模索し、次々と「ライブ機能」をリリースしていきます。

出所:36KR RESEARCH
初期のECプラットフォームでは、「ライブ配信+コンテンツ+EC」のモデルが確立。
新規ユーザー獲得のためのコストを削減し、ユーザーの定着率を高めることを目的としていました。ライブ配信ポータルサイトの開設やマーチャンダイザーの育成、インキュベーションに加えて、バラエティ番組の配信など、商品やサービスの販促マーケティングの領域を超えたコンテンツ拡充も積極的に行われました。
とりわけ、増加する若者ユーザーの好みに合わせた「バラエティ生放送」は高い注目を集めました。
2018年には、KUAISHOUやDOUYINなどのショートビデオやソーシャルコンテンツのプラットフォームがEC市場に参入し、ライブストリーミングを活用したトラフィックを実現するために、別会社のサイトとなるショッピングプラットフォームへ流出させるのではなく、自社プラットフォームで購入まで完結可能なモデルを構築。ショートビデオとソーシャル プラットフォームは、その強力なトラフィックのメリットを活かして、ライブEC事業におけるユーザーの”アクション”を加速させました。
結果的に、
➀伝統的なECプラットフォーム(TAOBAO &JINGDONGなど)
➁SNSプラットフォーム(TIKTOKなど)
➂ソーシャルEC(MOGUなど)
という3カテゴリのプラットフォームがそれぞれのECのあり方を確立し、消費者のニーズに応えていくようになりました。
買い物目的以外に、楽しいコンテンツを閲覧するレジャーの時間に目に触れたものをすぐに購入できる、そんなECの最大の特徴を軸に、今後はさらに新しい形のECプラットフォームが出てくる予感です。
参考:https://pdf.dfcfw.com/pdf/H3_AP202012041436556022_1.pdf?1607092275000.pdf
④政府の支援
企業だけでなく中国政府及び市町村といった行政も農村商品が販売できるよう、ライブコマースでの販売を促進するイベントなどを積極的に開催しています。
中国商務部のモニタリングによると、中国政府は、消費者促進月間を設けるなどライブストリーミングを推奨する支援政策を発表し、2020年上半期の中国全国におけるライブコマース実施回数は1,000万回以上、アクティブライバー数は40万人以上、視聴者数は500億人以上、棚に並んだ商品数は2,000万点以上と発表されています。
山東省にある済南市は、中国国内企業がオンラインとオフラインの融合を加速させる中、ライブコマースの発展を見込みその分野に関わる人材の需要を見込んで、ライブコマース販売員の人材育成に励んでいます。
また、本年「電気事業経済を精力的に発展させ、ライブコマース経済本部を構築するための実施計画」が発表され、 中国全土で20ヶ所以上にのぼる大規模なショートビデオ経済本部、100以上のMCN、300以上のウェブ・セレブ・ブランド、5,000以上の生放送ルーム、10,000以上のライブコマース専門インフルエンサーを起用した「ニューメディア首都」、「中国(済南)短編ビデオ基地」の設立を支援し、ニューメディア産業チェーンを統合・最適化して、より多くのライブ放送経済基地の設立と産業強化に注力しました。
今後、中国でライブコマースを実施するには「ライブコマース専門資格証明書」が必須になると言われています。
参考:https://www.163.com/dy/article/GN7FRBGH0526OT92.html
④人口の多さ=人件費の安さ、発達する配送業
ご存知の通り、中国は世界一の人口大国。貧富差は激しく、中国国家統計局が発表したデータによると、2020年の都市部就労者の平均年収は9万7379元(日本円で約165万円)。日本の平均給与は連続2年下がっているものの、436万円で推移しているため、中国では日本と同じ給与で日本の二倍の人を雇えることになります。ライブコマースに伴う配達、カスタマーサービスなど、必要な職種にしっかりと人員を確保できる土台があり、参入するハードルも比較的低いといえます。
⑥工場が多く存在
人件費が安いため、日本においても10年前までは製造拠点といえば中国の一択でした。
近年、中国のGDPの増加、賃金の引き上げなどを要因に、多くの海外企業は中国から離れてより人件費の安い東南アジアに工場拠点を移しています。とはいえ、中国にはまだたくさんの工場が残っています。
ライブコマースは、従来の販売方法よりも初期費用をかけずにスタートできるビジネスモデルです。多くのメーカーは広告費用や経費削減のため、ライブコマースをスタート。工場から直接仕入れることで中間の商流を省き、安い原価を実現できます。消費者からはもちろん、安い商品を購入できるため受け入れられていきました。
▼現在中国でよく見られるライブコマースタイプの分類
・メーカー工場でのライブ
・卸し市場でのライブ
・原産地(果物&野菜)でのライブ
・店舗でのライブ
・スタジオでのライブ
スタジオでのライブ配信以外には、メーカー工場や&原産地でのライブが一番多くみられます。
良い事づくしに見えるライブコマース。その問題点とは?
ここまで、中国のライブコマースの良い点についてたくさん書きましたが、逆に問題点はないか、気になりますよね。実は、問題点もたくさんあります。
●返品率が30〜40%にものぼる
2020年の「独身の日セール」について前述の通りその規模の大きさに触れましたが、その30%にあたる2兆円3760億円相当の商品が翌日には返品されていました。
ライブ配信で販売される商品の平均単価が2000円と仮定すると、約1億件の商品が返品されている計算になります。一人の従業員が一日で返品処理可能な商品数が100件だとすると、1000人がつきっきりで返品対応に従事しても1000日かかります。いくら、システムで自動処理されるとしても、人手による膨大な作業量が存在しています。カスタマー対応も必要なのです。
●薬機法違反など消費者を誤認させる内容の発信
中国のトップKOLである李佳琦が、2021年8月15日にタオバオライブを通じて宣伝した商品「初普 stop vx 美容器」について、その配信内容が消費者を誤認させる内容だとした違法行為として勧告を受け、30万元の罰金を科られました。
また、MUFGのレポートによると、37.3%の消費者がライブコマースに関するトラブルを経験したそう。トラブルにあった消費者のうち36.5%(利用者全体の 13.6%)が苦情を申告した一方、63.5%(利用者全体の23.7%)の消費者は苦情は申告無し。苦情を申告しない理由としては、「損失が比較的少額」であること(46.6%)、「苦情処理プロセスが複雑、時間がかかる」、 「苦情を申告しても役に立たない」と考えていること(2割弱)が挙げられます。

例えば、多くのファンがいる配信者がライブコマースで、”焦げ付かない鍋”を取り上げて実演したところ、配信中に何度も卵が焦げ付いてしまったそう。そのため、ユーザーは、配信者がライブ配信前に商品を試していない=実際に良いものと認識していなかったのではないかとの疑念を抱きました。
※広東省市場監督管理局、広東省消費者委員会「双11オンラインショッピングのヒント」(2019.11)参照
さらに、別の事例では、インフルエンサーが、ホワイトグースのダウンジャケットを紹介。本来の価格が1,000元のところ185 元で提供されるという大盤振る舞いであったためユーザーから注文が殺到。1時間あまりのライブコマースで17,881着、売上額は331万元が販売されました。しかし実際に届いた商品は、製造者タグがなく出所不明なもので、ライブコマースでの紹介とは異なる、70%のポリエステルと30%のグレーダックでできていたものでした。消費者はインフルエンサーに連絡をとったものの、回答は得られなかったそう…。 ※四川刑務所「公職弁護士声明ライブコマースは冷静に、権利保護の意識を高める必要あり」(2020.5)参照
▼その他違反事例まとめ
●データ&会計の不正
→http://www.huanju.cn/post/03890407
不正会計疑惑が浮上した大手のライブ配信サービス会社・JOYY社。
監査ファームはライブコマース事業に対しての理解が浅いため、そのレポート内容には誤った情報が大量に含まれていたとオフィシャルサイトに声明を出しました。
この事件の背景には、中国ほどライブコマース市場が発達している国は他になく、さらにそれらの中国企業は上場を目指すことが多い点にあります。会計に関する監査基準は一般的に欧米を基準とすることが多く、また欧米には中国のケースに汎用できるほど発達したラブコマース市場と事例がありません。よって、その基準は不透明で、こういった事件が起きてしまったのです。
●トップインフルエンサーしか注目が集まらず、新人のKOLなどは注目度が低いアルゴリズムが存在する。
2021年11月11日の「独身の日セール先行販売」は、10月20日にピークを迎えました。李嘉琪が106.5億ドル、薇娅が82.5億ドルを売り上げるなど、Taobao Live史上最高の取引額と称されるほどの売上でした。 この2つのGMVを一晩で合計すると、大半の中小メディア企業の年間売上高を超えるでしょう。
トップKOLの販売能力はもちろんですが、実はどのプラットフォームにおいてもKOL(配信者)への分配メカニズムも鍵を握っています。 淘宝ライブ&KUAISHOUを例にとると、淘宝ライブのホームページ推薦などのトラフィックのメカニズムは、トップKOLがよりトップ表示されるようになっています。あるデータによると、タオバオライブの毎晩のインプレッション(トラフィック)は、薇娅が30%、李嘉騏が20%を占めており、残りの50%に値するタオバオ全体のKOL数は20万~30万人(2019年)。もちろん、インプレッション(トラフィック) を増やすための料金を払えばより多くの利用者に視聴されますが、新人KOLにとってその金額負担は大きいものです。
一包、TAOBAOと比較するとKUAISHOUはとても良心的でKUAISHOUのDAUは3億に達するが、トップ10のKOLはトラフィックの30%しか占めません。
*GMVとは、Gross Merchandise Value(もしくはGross Merchandising Volume)の略で、そのマーケットやプラットフォームで消費者が購入した商品の売上の合計額、流通取引総額のこと。 マーケットプレイス型ECモールやフリマアプリなどのビジネスで用いられることが多い指標である。
④メーカーには利益が少ない
ライブ配信の果実の旨味はそこまでではないという現状があります。 昨年末、司会者として活動する李翔がミンクをライブコマースで販売したところ、「5分間で80万元」という出演料に対し、商品は1点も売れませんでした。
また、王祖蘭という人物がスキンケア商品をライブで販売したところ、再生回数が42万回に達したにも関わらず、実販売数は66箱のみにとどまりました。単価が58元の商品で、出演料の元を取るにもほど通り売上でした。
最近、あるお茶メーカーが300万人以上のファンがつく人気KOL宣伝に5万元の投資をしたが、売上はゼロ。メーカーは、配信時の状況を、閲覧数が1300人しかおらず、そのうちの100人以上が関係者でサクラだったと悲惨な状況を語っています。
*中国のニュースによるまとめ参照
参考:https://new.qq.com/omn/20200601/20200601A0GKN500.html
KOLメインプレイヤーの収益はいかに?

出所:Iimedia research
※あくまでも売上高ベースであり、実際の人件費等を除いた純利益ではありません。
端的に言って、KOLメインプレイヤーは多く稼いでると言えます。
中国TOP3に入るKOL・羅永浩は、2018年末に6億元(106億円)抱えていた借金を、2020年9月23日時点4億元(71億円)近く返済済みであると、借金返済の進捗状況を報告しています。
2020年4月1日、羅永浩はライブコマースをし、その売上高は1億元(17億円)を突破しました。実際、約2年間で返済できた4億元(71億円)は、携帯電話チームと関連する知的財産権の販売による1億8千万元(32億円)を含み、その他の2億元(35億円)以上は、別の会社の稼ぎとライブコマースの稼ぎが占めていたとのこと。借金はあるものの、ライブコマースでの年商は少なくとも5億円を超えていると推測できます。羅永浩本人曰く、残りの借金額2億元(35億円)は2021年の年末にできそうとのこと。ライブコマースに多くの利益を見込んだからこその発言でしょう。
ライブコマースをしているトップインフルエンサー(トップに限る)は利益が出ているのです。

参考:https://sa123.cc/qqbm4b923iisknieuwin.html
プラットフォーム3タイプの財政状況
● MOGU
2021年度時点で、3億2800万元の赤字。ライブコマースの第一人者であるが、ずっと赤字です。業種変更したとは言え、黒字がまだ見込めません。
GMS=Gross Merchandise Volume
●ALIBABA(TAOBAO)
ライブコマース事業がメインではないが、2021年度の売上は、727億元。
※1.241兆円相当額
(PAGE114)
●DOUYIN
Bytedanceとして知られるDOUYINは、すでにEコマース、ゲーム、教育、企業向けサービ
スで存在感を示していますが、収益構成では広告が依然として主で、2020年度の実収入の77%を占めています。海外事業(TIKTOK)によって、中国国内の事業も成り立っているというのが現状です。
売上は、2366億元。
※40.35兆円相当
参考:
MOGU以外は黒字であり、ECプラットフォームとしての収益は好調であることが見受けられます。
結論として、「中国のライブコマースはプラットフォーム側における広告として一役買っており、メーカーにとって利益を生み出せる販売ツールではない」と言えます。
とはいえ、メーカー側にとっても知名度を上げる話題作りの起爆剤としては大いに活用できるように思います。トップインフルエンサーは商品(案件)を吟味しており、問題にならないよう最大限の注意を払って情報を発信します。広告主としては、選ばれし商品である強い販促ツールとなるのです。
日本が中国を真似てライブコマース成功させるには、長期的な戦略プラン、MCN企業の設立及び人材育成など、中国が辿ってきたような工程が必要だと言えます。
儲かる・売上に直結するものではないとしても、権威のある第三者の目線で語ってもらえ、かつ従来のマス広告よりもインタラクティブであるため消費者に受けいれられやすい点はメーカーにも美味しい点です。
